手仕事の温かみが息づく長野県・木曽。
木曽檜や木工の産地としても名高く、古くから「ものづくりの里」として多くの職人たちに愛されてきました。
この記事では、筆者が実際に体験した「木曽の伝統工芸にふれる1日モデルコース」をご紹介します。木曽でしか出会えない手仕事と、心に残る体験の数々。あなたもきっと、体験してみたくなるはずです。
木祖村の藪原宿で「お六櫛」磨き体験
1日の始まりは、木曽エリアの北部・木祖村にある「藪原(やぶはら)宿」からスタート。

ここでは、300年近い歴史を持つ伝統的工芸品「お六櫛(おろくぐし)」の製作工程を間近で見学し、その一部を自分の手で体験できます。




お六櫛とは、木曽地域の藪原宿(木祖村)を中心につくられている伝統的工芸品。材料は、別名オノオレカンバとも呼ばれるミネバリを使用することが多く、丈夫で粘りがあるため櫛に適しているといわれています。
筆者も愛用していますが、髪の毛をとかすだけでなく、艶のある美しい髪に育ててくれるのが特長です。江戸時代から髪通りの良さと香りの高さで女性たちに愛されてきました。


体験は、櫛の「磨き」の工程。紙やすりを使って丁寧に磨いていくと、最初は少しザラついていた木肌が、だんだんと手に吸い付くような滑らかさに変わっていきます。
「木の香りがふわっと広がって、磨くほどに愛着が湧いてくるのが不思議でした」

完成した櫛は持ち帰りOK。旅の記念として、また大切な人への贈り物にもぴったりです。
ふるさと体験 木曽おもちゃ美術館で初めての「蕎麦打ち体験」

次に向かったのは「ふるさと体験 木曽おもちゃ美術館」。実は地元産の木材と食文化を体感できる体験型美術館です。


今回はここで、人生初の蕎麦打ちにチャレンジ。手ほどきを受けながら、そば粉と水を混ぜ、練り、延ばし、切る工程を体験しました。
最初はなかなか思うようにいかず、「こんなに難しいの!?」と焦りましたが、指導してくださった先生とのやり取りもあって和やかな雰囲気に。気づけば夢中になっていました。

「自分で打った蕎麦は、太さがまちまちでも、何より香りが良くて美味しい!」
体験後は、自分で打ったお蕎麦をそのまま昼食に。できたてを頬張るひとときは、まさに格別でした。


またお蕎麦だけでなく、カフェ「四季」では地元食材をふんだんに使用したカレーや五平餅なども人気。お腹に余裕のある方は、ぜひあわせてご賞味ください。


ふるさと体験 木曽おもちゃ美術館には赤ちゃん木育広場のスペースも!

「ふるさと体験 木曽おもちゃ美術館」の面白いところは他にも!
赤ちゃんから大人まで楽しめる、木曽の木材をふんだんに活用した「おもちゃのやかた」があるのです。


大人でもワクワクするような体験スポットがたくさん!


木曽くらしの工芸館で漆器の研ぎ出し体験
最後にやってきたのは、木曽平沢にある「木曽くらしの工芸館」。

こちらでは、木曽漆器の魅力にふれることができます。中でも人気なのが「研ぎ出し」体験。

研ぎ出しとは、幾重にも塗り重ねた漆器の表面を薄く研いで下地の文様を浮かび上がらせる技法のこと。今回は、漆器のスプーンを使って体験しました。



紙やすりで少しずつ表面を削っていくと、下から赤や黒の模様がじわじわと現れ始め、まるで宝物を掘り出すような感覚に。
「どんな模様が出てくるかは研ぎ方次第。世界にひとつだけの漆器ができあがるのが嬉しい」

職人さんの指導のもと、自分だけの漆器が完成!
木曽の自然と伝統を感じる、深い味わいのある作品になりました。
体験を終えて:木曽の手仕事と向き合う贅沢な一日

現地の方々と会話をしながら、手を動かし、自分の作品が仕上がっていく。そこには「作る楽しさ」だけでなく、「受け継がれてきた時間の重み」や「土地とのつながり」を感じる瞬間がたくさんありました。
忙しい日常を抜け出して、手を動かしながら自分と向き合う——木曽のものづくり体験には、そんな贅沢な時間が流れています。歴史と自然に抱かれたこの場所で、あなたもきっと“何かを作る”ことの喜びを見つけられるはず。
気になる体験を見つけた方は、ぜひ予約して木曽へ遊びにきてくださいね。
長野県のニッチな観光メディア『Skima(スキマ)信州』コラボ記事
企画・編集:Skima信州
執筆:山本麻綾
撮影:内田元也