長野県を経由して江戸と京都を結ぶロマン溢れる街道、中山道(なかせんどう)。
木曽を通るため木曽路とも呼ばれるこの街道沿いには、魅力溢れる宿場が11箇所あります。なかでも人気が高いのは、街並みに江戸時代の風情が色濃く残る奈良井宿です。
この記事では、奈良井宿とその北隣にある漆器の産地・木曽平沢で出会える、レトロさと新しさを兼ね備えたグルメやお土産品をピックアップして紹介しましょう。
奈良井宿は鳥居峠の手前に位置し、全長約1㎞ある大規模な宿場町だ。2階がせり出した出梁造りの建物が軒を連ね(写真の建物は宿場カフェいずみや)、街中を散策しているだけで江戸時代にタイプスリップしたような気分を味わえます。
【奈良井宿】宿場カフェいずみや/散策の合間に手作りスイーツとコーヒーでひと休み
古民家の一階でコーヒーやスイーツをいただけるカフェ。店舗は、店主の篠原将宏さんの実家を改装したもの。幼い頃から奈良井宿を行き交う観光客を観察していた篠原さんは、「距離のある奈良井宿には、旅人がほっと一息つける場所が必要なのでは」と思いこのカフェを開業したそうです。
店のメニューには、豆や焙煎にこだわったハンドドリップコーヒー、地域の食材も使った手作りスイーツなどが並びます。なかでも多種類のスイーツが盛り込まれた「奈良井ブラウンパフェ」が大人気。
【奈良井宿】徳利屋/かつての旅籠でいただく手打ち蕎麦と五平餅
島崎藤村や正岡子規なども利用していた、江戸時代に「旅籠」として使われていた建物を活用した食事処。屋号でもある店名の「徳利屋」は、300年ほど前、この店の先祖が元旦に村の鎮守へ参拝したとき、一個の徳利が逆さまに立っているのを発見し神前へ供えたというのが由来だとか。
おもに提供されているのは蕎麦や五平餅といった木曽の郷土料理で、栗ぜんざいやおしるこなどの甘味があるのもうれしいところ。店内のあちこちに、歴史を感じる展示品が飾られているので、食事の前後にぜひチェックしてみてください。
【奈良井宿】宮川漆器店 奈良井宿店/木曽路の名物土産、お六櫛はここで買える
奈良井宿の西隣にある藪原宿に本店を構える漆器店。奈良井店では、本店の工房で制作している箸や椀に加えて、藪原宿の名産「お六櫛」が取り扱われています。
お六櫛とは木曽産のミネバリの木を用いた木櫛のことで、頭痛に悩んでいた旅籠の娘、お六がこの櫛で髪をといたら病が全快したという伝説があるそう。
細い歯が真っ直ぐ並ぶ繊細なこの木櫛は、ひとつひとつ職人の手によって仕上げられています。
店内には、お六櫛以外にも材質や形状の異なる木櫛がずらりと並んでいるので、髪質や長さ、用途によって自分に合う一本がきっと見つかるはずです。
【奈良井宿】大宝寺/マリヤ地蔵尊が境内に眠る寺へ
街道の脇道を進むと、400年前に建立された臨済宗妙心寺派に属する禅寺、大宝寺があります。大宝寺への参拝とともにぜひ立ち寄ってほしいのが、境内にひっそりと祀られている「マリヤ地蔵尊」です。
キリシタン禁制の時代、木曽にいた隠れキリシタンが観音像を装って祀ったものであると言い伝えられており、昭和7年(1932年)に籔のなかに埋もれているところを発見されました。頭部や抱かれた子ども、膝が破壊されているこの石像は、不気味ながら神秘的な、不思議な魅力を持ち合わせています。
【木曽平沢】丸嘉⼩坂漆器店/漆とガラスを掛け合わせた新しいアート
1945年に創業し、3代にわたって漆工町・木曽平沢の伝統を紡いできた漆器店。3代目を担う小坂玲央さんは、ガラスに漆を密着させる技術を父親の康人さんから継承し、2013年には彩り豊かで繊細な漆硝子ブランド「百色」シリーズの販売を開始しました。2022年にはその百色シリーズから「Jeweki」というアクセサリーのプロダクトを発売するなど、漆とガラスの掛け合わせによる表現を広げ続けています。
店舗では商品を購入できるうえ、タイミングが合えば2階の工房を見学することも可能。商品が手作業で作られる過程を見れば、モノへの愛着がいっそう深まるはずです。
ガラス製の器の外側に、細い線を色漆で真っ直ぐ描く。フリーハンドで1本ずつ描く様は、まさに職人技。線を描き終えたらその上に色漆を塗り重ねて、写真右のような仕上がりに。小坂玲央さんが立ち上げた百色シリーズの人気商品「蕾 クリスタルボウルS」。
長野県のニッチな観光メディア『Skima(スキマ)信州』コラボ記事
企画・編集:Skima信州(山本麻綾)
執筆:松元麻希
撮影:松村七海