TRIP IDEA 003|身につけるものを自分で作り上げるという体験

軽く、暖かく、袖がない防寒着。南信州 木曽上松の「ねこ」作り教室。

木曽谷の木々が少しずつ色づき始め、肌寒くなり始める秋から冬の間に南信州の防寒着「ねこ」を作る教室があります。

「ねこ」とは信州の南部に昔から伝わる防寒着で、袖がなく さっと羽織ることができて、背中から優しく身体全体をあたためてくれる防寒着です。

昔、養蚕が盛んだった信州。南信州の養蚕農家の女性は、出荷できなかったお蚕(かいこ)さんの繭で真綿をつくり、着物をほどいた古布と「もめん綿と真綿」をつかい『ねこ』を家族のために作られたもので、現在でも家庭で作られているものです。

その『ねこ』を自分で作る教室が冬季限定で月2回(午前と午後2時間づつ)開催されています。
1回の参加で完成できるものではないので、だいたい4・5回通われている方が多いです。

今も昔もさまざまな人が行きかう木曽福島にあるコワーキングスペース

場所は長野県木曽町にあるコワーキングスペース・サテライトオフィス「ふらっと木曽  https://flatkiso.com/」。
木曽町福島地区は江戸時代に四大関所のひとつである福島関所がおかれ、かつて多くの旅人が行き交った場所であり、現在でも木曽地域の交通の要となっています。
会場の「ふらっと木曽」は木曽福島駅から徒歩15分ほど。新宿高速バス乗り場からも徒歩3分で、とてもアクセスのよいところにあります。

講師は二宮美香さん。
美香さんは、名古屋市出身で2015年からご夫婦で木曽に移住され、上松町の倉本地区で家具や生活雑貨の製作をしている小さな木工房「椿井(つばい)木工舎」をご夫婦で営まれています。

着なくなった着物をアップサイクルした布選び

まず、会場に着くと始めることは、表地と裏地の布選びと丈の長さを決めることです。
沢山の着物の生地から自分の好みの色や柄を選び、裏地と組み合わせる時間は一番ワクワクする時間かもしれません。

この教室で作る『ねこ』の特徴は驚くほど軽く、薄く、暖かく、肩が凝らないことです。
寒い日にセーターの上に羽織る上着のように、またはセーターの中にインナーのように着ることもできます。

布選びが終わると早速針仕事です。首周りと自分で決めた長さに布を裁断し、しつけをして、裏地と表地を縫い合わせ、両脇の布の始末をします。無心に縫っているとあっという間に2時間が過ぎてしまいました。

ここで午前中の1回目のねこ教室は終わり、お昼の時間です。

ランチタイムは木曽町のお昼処や和菓子屋さんでショートトリップ気分。

講師の美香さんより、木曽町のお昼処やお土産の情報を教えていただきました。
長野県外の方で教室に参加される方も多く、午前と午後の回を続けて受講されるため、参加者同士でランチに行かれる方も。

木曽町福島には徒歩で行けるお店や観光スポットがあるので、皆さんお昼休みを楽しく過ごしていらっしゃいます。

数ある観光スポットの中でも昼休みの間に楽しめる場所をご紹介します。

木曽町福島地区には「崖家づくり」と言われる、木曽側にせり出すように家々が立ち並ぶ建築群の一角があります。橋の上や足湯をしながら崖家造りを眺めたり、近くには元調剤薬局の空き店舗をリノベーションしてオープンした日用雑貨店「en-shouten  https://en-shouten.com/」や、店舗から崖家造りがよく見える「小池糀店  https://www.koji-miso.com/」もあるのでお土産を買いつつ散策できます。

また木曽町には和菓子屋さんが沢山あり、秋から冬にかけては栗の餡の中にお餅が入った「栗子餅」や春に近づくと「桜餅」「鶯餅」「草餅」など季節限定の和菓子が店頭に並びます。各店舗味が違うのでぜひ「はしご」をして楽しまれてはいかがでしょうか?

「ねこ」作り最大の見せ場「真綿を広げる」

そして、2回目の午後の部です。

両脇を縫い上げたら、紐を作ります。そしてこの「ねこ」作りの一番の要。
「もめん綿を敷き詰め、お蚕さんが作った真綿を広げる」という作業です。

一番驚いたのは、真綿を広げる作業です。
ほんの少しの真綿を、2人で端と端を持って伸ばすと切れずに薄く広がります。
もめん綿の上にこの少しの真綿が重なることで軽くてとても暖かい「ねこ」ができるということです。

また、講習のところどころで、縫って短くなってしまった糸と新しい糸を繋ぐ方法や、短くなって玉止めができない時の処理の方法などを教えていただけるため、とても勉強になりました。今後の暮らしにも活かせられそうです。

ここからの縫い方は和裁の「くけ縫い」というやり方です。波縫いとは違い時間がかかるため、辛抱強く縫い上げていきます。

残念ながら私は、午後の2時間で出来上がらなかったため、残りを家で縫い、別日の3回目に参加して完成させることにしました。

身につけるものを自分で作り上げるという体験

3回目の別日の午後の部です。
家で縫った紐を自分の身体の長さに合わせて調節し、胴体につけて3回目にしてやっと完成しました。

自分で作った「ねこ」を背負うと嬉しい気持ちでいっぱいです。手縫いで「縫えた」ということが自信につながり、自分で「縫える」という体験が今後生きていくうえで大切になってくるのではないかと感じました。

また、講師の美香さんから「ねこ」にまつわるお話や移住してからの木曽での暮らしのこと、畑作業や山のことを聞くのも楽しみの一つです。

県外から参加された方の感想は、電車から見える木曽谷の風景が美しく、お昼休みには、季節のお土産「栗子餅」や「豆腐」や「味噌」など美味しいものも購入できて、ちょっとした「旅気分」を味わえたそうです。

ある方は、夫婦で木曽に来て日中旦那さんは別のアクティビティ。奥さんは「ねこ」作り。夜は近くのキャンプ場「木曽古道  https://tmokiso.com/kisokodo/」でキャンプを楽しまれた方も。

ぜひ一人参加はもちろん、ご家族と一緒に木曽を満喫してみてはいかがでしょうか?

取材日:2022年3月26日

講習予約はこちら
事業所名:
   ふらっと木曽(ワークセンター木曽町)
所在地:    〒397-0001 長野県木曽郡木曽町福島 5122
電話番号:   0264-24-0215
体験時間:   約4時間 × 参加回数
参加費:    1回4時間 5,000円(税込) テキスト付き
※初回のみ、生地(着物地)材料(真綿、木綿わた、糸)代が 2,000-3,000円かかります。(個人の技量により通う回数が違います。だいたい4-5回もしくは2~3日の参加で縫いあがります。)
持ち物:    裁縫道具(針・糸・ハサミなど。まち針多め 40本以上がおすすめです。) 筆記用具
※お持ちでない方は、貸し出しも可能です。予約時にお知らせください。
詳しくは ふらっと木曽公式ホームページをご覧ください。
https://flatkiso.com/creative_area/events/entry-713.html

ライタープロフィール eriko
都内で長らく会社員SEとして働いたのち信州へUターン。信州木曽のコワーキングスペースとシェアキッチン「ふらっと木曽」の立ち上げと運営・人と人を繋ぐコーディネーターとして活躍中。合間にPOP・UP喫茶やイベント出店もしています。

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